先輩からの卒業




  【巧side】


バレンタインの少し前、偶然道端で会った友達からこう告げられた。

「加恋がお前に会いたがってる」と。



加恋は高2の時、少しの間だけ付き合っていた元カノだ。


別れてから2年。正直、今更会うつもりなんてない。


そう思っていたけど、奈子との会話の途中、俺は加恋と会うことを決めた。


きっと、奈子は俺と加恋がよりを戻すことを願っているから。


事実、その話をした数日後から奈子の態度は180度変わった。


まだ無理をしているように思えたが、それには気づかないふりをした。

時間が経てば昔みたいな関係に戻れるはず。

そしたら、奈子だって俺への罪悪感よりも自分の幸せを考えてくれるはずだ。

そう願って───。





カランコロンカラン。

学校の最寄り駅近くにあるカフェ。

そこが加恋との待ち合わせ場所だった。


「久しぶり」

先に来ていた加恋は最後に会った時よりも随分と大人びていて、周りの男性客の視線を一身に集めていた。


その姿にこれっぽっちも心が動かないことには気づかないふりをして、俺も席に着く。