今日は2月14日、バレンタインデー。


もちろん私は今年もチョコを用意していない。

下駄箱前では下級生たちが可愛くラッピングされた紙袋や箱を持ちながら落ち着きのない様子で立っていた。

きっと、この子達は今から好きな相手にチョコを渡すのだろう。

その様子を横目で伺いながら、いつもどおり教室へと向かう。




「おはよう」

そう言って教室に入ってきた先輩はすでに両手いっぱいのチョコを抱えていた。


先輩の席は机の中はもちろん、上にも丁寧にラッピングされた箱や紙袋が山積みで今にも崩れ落ちそうだ。


それをひとつひとつ丁寧に手に取り、持参したであろう紙袋にしまっていく先輩。



「見て奈子、ずげぇ数。多分今年が一番だな」

誇らしげにそれを自慢する先輩に「そうですね」と当たり障りのない返事を返す。



「今年は同級生だけど友チョコとかないの?」


「……作ってません」


「へ〜」


先輩は一体どういうつもりでそんなことを聞くのだろうか?


先輩にとっても私からのバレンタインにいいイメージはないはず。