「いや、いいよ。俺が付き添うから」


そう言う先輩を押しのけるような形でしゃがみこんだ彼は私の耳元でこう言った。


「先輩に迷惑かけたくないんだろ」と。


その言葉に小さく頷くと、浪川くんは私を軽々と勢いよく担ぎあげた。


周りからは「大丈夫?」と言う声と共に黄色い歓声が上がる。

なぜなら、浪川くんが私を抱えた様子が俗に言うお姫様抱っこというやつだからだ。


「ごめんね」


「古谷は俺に何回謝るつもり?」

「ごめ……ありがとう」

保健室につくと、養護教諭の先生が奥にあるベッドを貸してくれた。


そこに横になると、ずいぶんと身体が楽になっていくのがわかる。



「顔色。さっきより、だいぶマシになったな」

「浪川くんのおかげだよ」

先輩は心配して駆け寄って来てくれたのに、それを無下にしてしまった。


そんな申し訳なさが頭の中を過る。


「なぁ、やっぱり俺にしとかない?」


「え?」


「いや、なんでもない。じゃあ、俺戻るから」

「ありがとう」

浪川くんが保健室を出ていったあと、私はまぶたを閉じゆっくりと眠りについた。