「へぇ〜見かけによらず熱い男だねぇ浪川」
ことの全貌を知った真帆は隣でニヤニヤと口元を緩める。
「じゃあ、返事は保留中ってわけだ?」
「ううん、断ったよ」
「え、どうして!?今のは返事は後日って流れじゃないの?」
真帆の言うとおり、浪川くんには返事は後日で良いと言われた。
「だって、何度考えたって私には同じ返事しか返せないから」
数日後?一週間?後日返事を返すというのはどれくらいの期間のことをいうのだろう。
セオリーがあるなら教えてほしい。
ただ、どれだけ時間を貰ったって私が出せる答えは一つしかないのだ。
それなら、返事を先延ばしにするわけにはいかない。
「奈子……。あんたまさか三宅先輩より先に幸せにはなれない。とか言うんじゃないでしょうね」
真帆はあの日あったことを知っている。
私が先輩に想いを伝えられないことも。
「そんなんじゃないよ。ただ、先輩への想いもまだ消せない私が浪川くんと向き合うなんてできないから」
私が壁に向かいそうポツリとつぶやくと、真帆はただ黙って私の手を握りしめた。