「古谷1年の時よくサッカー部の練習見に来てただろ。あの時、周りがミーハーな気持ちでギャーギャー騒ぎ立てる中、1人静かにじっと練習見てたから自然と目がいったんだ」


そうだ、浪川くんも先輩やお兄ちゃんと同じサッカー部所属だ。


「けど、急に練習見に来なくなっただろ?そしたら余計気になって。何か大きなきっかけがあった訳じゃないけど、目で追ってるうちに気づいたら好きになってた」


そんな前から気にかけてくれていたんだ。



誰かから好意を寄せられたことなんて今まで一度もなくて、浪川くんの真剣な想いに胸がぎゅっと熱くなる。



「俺、卒業後は地元離れる予定だから今のうちに言っときたくて。俺と付き合ってくれませんか?」


「……気持ちはすごく嬉しいんだけど。ごめんなさ、」

「せめてもう少し考える素振り見せてよ」

私の返事を遮るように浪川くんはそう言うと少しだけ表情を緩め笑った。


「ごめん……」

「いや、俺の方こそごめん。振られるのはなんとなくわかってた。だって、古谷が好きなのは三宅先輩だもんな」

三宅先輩。不意に出たその名前に自分でも驚くくらい、瞳が揺れた。


なんでそんなことまで……。