「古谷。壁、ぶつかる」
「……へっ、」
あの日のことを思い出しながら歩いていたせいだろうか、その言葉に足を止めると目の前には真っ白な壁が立ちはだかっていた。
あと数歩、歩みを止めるのが遅かったら私はこの壁に激突していたに違いない。
「気をつけろよ」
「ごめん。ありがとう浪川くん」
声をかけてくれた隣のクラスの浪川くんにお礼を伝えると「別に」と振り返ることもなく歩いて行ってしまった。
「奈子、浪川と仲良かったっけ?」
その様子を遠くの方から見ていたであろう親友の真帆は隣に並ぶなりそんなことを聞いてくる。
「えっと……実は一昨日告白されて」
「はぁ!?何それ初耳なんだけど」
真帆は大きな目をまんまると見開くと私を人の少ない東校舎の階段へと連れ出した。
「で、いつの間にそんなことになってたの?」
「別に隠すつもりはなかったんだよ?ただ一昨日、真帆学校休んでたから……実は───」



