「お母さん、お父さんおはよー!」

「おはよう、芭奈」


 一日の始まりは、朝起きてお母さんが朝食を作っている音からはじまる。

 炊飯器の炊けた合図であるピーピーと鳴る音が聞こえて味噌汁の具のネギを切る音、厚焼き卵に使う卵を割り菜箸で混ぜるシャカシャカという音、他にもいろんな音が聞こえて朝が来たなぁと呑気に考える。


芭奈(はな)、味噌といてもらっていい?」

「はーい……」


 私、木島 芭奈(きじま はな)はあくびを抑えながら冷蔵庫から味噌を取り出した。それを出汁でねぎと豆腐が入ったスープの中で溶かしていく。湯気から味噌の香りが漂っていて空腹を誘った。