ざわつく一階の様子を暫く眺めていると、幾人かは周りの目を気にしつつも、そそくさと去っていった。

 だが、それだけだった。

 大半の奴らは怯えた様子もなく、まっすぐにこちらを睨んでいる。


「……不知火は、バカばっかりだな」


 そう呟くと、隣にいた弘人が何を今更、と吹き出した。


「総長がバカなんだから仕方ないだろ!」

「そうですよ~凪さん! 赤点で補習の総長なんてうちくらいですよ~!」

「風吹! そういう事ではないと思いますが……」

「くそ! お前らバカにしやがって……! 今は赤点の話は関係ないだろ!」


 弘人に続いて、その隣にいた風吹も響生も言いたい放題。みんな声がでかいから、しんと静まった倉庫内によく声が響く。

 そんなやり取りは筒抜けで、階下にいる野郎どもにも聞こえてしまったのだろう。堪えるようなクスクス笑いがさざ波のように沸き起こり、やがて誰か一人が大きく吹き出した。

 それをきっかけに、倉庫中が大爆笑。みんな腹を抱え笑い転げ、涙を流している者までいる。

 いくらなんでも、これは俺だって恥ずかしい……

 恥ずかしさを隠すように、俺はもう一度声を張った。


「――一時間後に敵陣へ出発する! それまでに準備しろ!!」