いつも楽しくて賑やかな不知火の倉庫が、今は緊張に包まれていた。

 藍乃を助け出す事に決めてから、すぐに招集をかけた。夏休みで暇を持て余している奴が多かったのか、短時間で倉庫の一階が埋まるくらい仲間が集まってくれた。

 外はもう陽が落ち夕闇が迫ってきていた。昼間の暑さも少し落ち着いたが、肌に
まとわりつくようなムシムシとした嫌な熱は続いている。きっと今日は熱帯夜になるだろう。

 頃合いをみて幹部室を出る。弘人や風吹と響生もそれに続く。すぐにある中二階の踊り場へ立ち下を見下ろすと、声を張った。


「――聞け! これから不知火は夜襲をかける!」


 倉庫内が男たちの威嚇(いかく)するような野太い叫び声がわき上がる。それが落ち着くのを少し待ち、続けた。


「だが、知っての通り、今回の敵はいつもとは違う。手を引きてぇヤツはここで帰れ。その事については何の責め苦も負わせる気は無い」


 お互いの暗黙を破って戦う、今回はいわば不測の事態だ。それに身に降りかかる危険もいつもの比じゃない。尻込みする者が出ても仕方が無いだろう。

 俺だって、ヤクザに銃と言われて怖くないわけじゃない。


 だけど、たとえ一人になっても……藍乃は俺が必ず助ける。