凪のお父さんが経営しているお店の様子を見に行ったら丁度、凪も来ていて凄く気まずい会い方をしてしまった。

 凪は私の名前を呼んでくれたのに、私は目をそらしてしまったから。

 しかも、一緒にいたのが不知火の敵、雲竜の総長、亜賀座くん。タイミングが悪過ぎてどうしていいのか分からなかったんだ。

 別れ方も最悪だった。

 結局私は凪と一言も話せなかった……


 凪と別れた後、バイクに乗せてくれた亜賀座くんは私を雲竜のたまり場のバイク屋さん『エクストリーム』に連れてきてくれた。今日はお店がお休みだったけど、店長さんが元雲竜の総長さんで、その好意で雲竜の人たちは自由に出入りできるようになってる。

 不知火の姫の私は本当はこんな所へ来られる立場じゃない。でも総長の亜賀座くんは人払いをしてまで私をここに居させてくれる。

 どうしてだろう? それは私にも分からないけど。

 でも今は亜賀座くんの好意に甘えている。不知火を飛び出してしまった私には、居場所がないのだから。

 今も店内には誰も居ない。店長さんも二階の自宅住居に引っ込んでしまった。

 店頭の方はバイク用品がたくさん置いてあるが、奥の方はちょっとした椅子とかテーブルが置いてあって、バイクの相談や商談が出来るようになっている。そこがいつも亜賀座くんたち幹部の席だ。