「藍乃ちゃんの事、ちゃんと素直になれよ。お前本当は藍乃ちゃんが――」

「――藍乃は妹だ!」


 弘人が全部言い終わる前に言葉をかき消した。


「藍乃は、幼馴染みで……妹みたいなものだ……」


 もう一度、自分に言い聞かせるように呟く。


 ――藍乃は妹……


 いつからだろう、その想いに違和感を感じる様になったのは。でも……

 体が弱くて病気のせいでいつも我慢ばかりしている、藍乃には幸せになって欲しい。

 親と不仲で暴走族なんてめちゃくちゃやってる男なんて論外。俺じゃダメなんだ。

 ちゃんとそう分かっている。なのに――




 どうしてこんなに苦しいんだろう。




「凪、いつまでもそうやって意地を張り続けてると、いつか絶対後悔するぞ」


 意地なんて張ってない、そう言い返そうとしたが、弘人はもう下に行ってしまっていた。