あれから、藍乃は不知火の倉庫へ来なくなってしまった。自分が疑われている、そう知ったのだから当たり前だろうが。

 俺もあれきり連絡は取っていないし、藍乃からも何も無かった。いつもならうるさいくらいSNSでメッセージ送ってくるのに。

 いろいろと気にはなる……でも、完全に信じる事も出来なかった。


 藍乃は俺に何かを隠している、それだけは確実だと思う。


 普段だったらこんな時――喧嘩をした時は、学園に登校してなんとなく顔を合わせているうちに、うやむやになってしまうのに。生憎、今は夏休みで授業なんて無い。

 そんな『うやむやの魔法』も使えそうになかった。

 弘人の彼女の奈央も、藍乃とは連絡がとれないという。

 だから今、藍乃が何をしているのか、どう考えているのか、全く分からなくなってしまった。


 ――雲竜の動きもどんどん活発になっていた。

 不知火の縄張りを荒らす小さな小競り合いから、仲間がよく寄る店にもちょっかいをかけている。見回りを強化して被害を押さえているが、イタチごっこだ。

 そして、とうとう……俺の父親が経営する店までやられてしまった。

 その店は、俺たち不知火がたまり場にしている倉庫のある倉庫街からほど近くにある。店内はカウンターに、テーブル席が幾つかあるだけの小さく、何処にでもあるカフェバー。