「俺はそんな事、言った覚えはない」


 もう後戻りは出来ない。

 振り返ると藍乃は、大きな瞳から大粒の涙が溢れ出し、俺を見ていた。


 これで終わりだ……


「全部終わらせようぜ、幼馴染みも何もかも。お前は俺の事なんて綺麗サッパリ忘れて、海の向こうで移植して元気になって、彼氏でも作ればいい。俺もやっとのびのび彼女が探せる」


 藍乃は何も答えなかった。

 なるべく顔を見ないように、出入り口の扉へ進む。ドアノブに手を掛けて、もう一度だけ藍乃に声を掛けた。


「じゃあな、さよなら……」


 部屋を出て扉を閉めると、中から藍乃が泣く声が微かに聞こえてきた。