「待たせたね、凪君。この先に面会用の談話室があるそうだ。そこへ行こう」


 案内するように先を歩き始めた父親の後に続いた。


 消灯時間が過ぎているからか、談話室は非常灯しか点いていなかった。薄暗い中かろうじて見えたのは、丸いテーブルが四つとそれぞれに椅子が二つ。壁にあったスイッチで一箇所だけ灯りをつけた。

 俺を灯りのついた席に座らせると、壁沿いに備え付けてある自販機から、おじさんは缶コーヒーを二つ買った。

 一つを俺の前のテーブルに置き、その対面に自分も座った。


「缶コーヒーで悪いが、良かったら」

「ありがとうございます」


 静かな中で、カツンと缶を開ける音が二つ響いた。


「――藍乃は、大丈夫だよ。長時間暑い場所にいたせいで、少し脱水症状があったようだけど。持病の発作も熱も点滴で落ち着いた」

「そうですか……」


 藍乃の無事が分かりホッとした。缶コーヒーを一口飲むと、やけに甘い気がした。


「朝になったら掛かり付けの病院へ移動させるつもりだ。大事を取って入院になるだろうし、退院したらすぐアメリカへ行く事になると思う」

「えっ? アメリカ……?」


 突然出てきた『アメリカ』という国名に驚いた。


 アメリカへ行くって、どういう事だ?