奥の小部屋にこもってジュエリーの修理をしたり磨いたりといった集中力のいる仕事が多いブルノは、いつも大体これくらいの時間に休憩を取る。

「ブルノさん、紅茶を淹れますね」

「ありがとう。いつもすまないな」

オデットはブルノの作業部屋の隣のドアを開けた。

そこはキッチンダイニングなのだが、簡素なベッドと洋服用のキャビネットも置かれている。

ここに勤め始めた一年前からオデットが寝起きする部屋として間借りしているからだ。

ちなみにこの建物には二階があり、そこには妻に先立たれたブルノがひとりで住んでいる。

商品の柱時計が十五時の鐘を打つ中、オデットがキッチンに立った。

銅製の蛇口のコックは鶏の形をして可愛らしく、それをひねってケトルに水を入れたら、カランコロンとドアベルが鳴った。

「いらっしゃい、ませ?」

なぜか戸惑っているようなブルノの声も聞こえ、オデットはケトルを置くと様子を見に店内に戻る。

ドアを入ったところに立っているのは、身なりのいい五十代くらいの男性だった。

後ろにグレーの騎士服を着た青年を連れており、胸を張るような姿勢でブルノと向かい合っている。