没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~

美麗かつ堂々と頼もしい立ち姿のジェラールに、オデットはのぼせたようにぼうっとして、差し出された手を取るのをしばらく忘れたほどである。

永遠の愛を誓い合い、焦るほどの長めのキスをもらってオデットは喜びに頬を濡らした。

列席貴族の三分の一はこれまで排除されてきたレオポルド派の貴族たちだった。

彼らにはそれぞれに込み上げる思いがあったようで、寄り添うジェラールとオデットの姿に涙していたのも印象的であった。

婚姻の儀を振り返って幸せに浸っていたら、ジェラールに呼びかけられる。

「オデット?」

「あ、すみません。午前のお式を思い出してぼんやりしてしまいました」

最初は踊れなかったワルツは、ジェラールの特訓の成果で気を逸らしていられるほど上達している。

「きっと人生で一番幸せな瞬間ですね。一生忘れません」

頬を染めて微笑めば、ジェラールがオデットをさらに引き寄せた。

体がぴったりとくっついては踊りにくいというのに、どうしたのだろうか。

オデットが戸惑っていると、耳元でゾクゾクするほど色のある声を囁かれる。