没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~

「君はもう俺の妻だよ。その翡翠のように綺麗な瞳に俺以外の男を映してはいけない」

甘い声で囁かれ、オデットは胸をときめかせる。

(私、本当に結婚したんだわ。儀式の流れや作法を覚えるのは大変だったけど、幸せな式だった……)

婚姻の儀が執り行われたのは、王都の中心部にそびえる荘厳な大聖堂。

歴史と趣を感じさせる鐘の音が響き、水色の初夏の空には白鳩の群れが飛んでいた。

貴族や近隣諸国の要人たち、たくさんの列席者に見守られたオデットは、涙でぐしょぐしょの父親とバージンロードを歩いたのだ。

この日のためにあつらえた純白のドレスはロイヤルワラントの縫製職人が五か月かけて手縫いで仕上げたもので、着るのがもったいないほど見事な衣装だった。

ベールは八メートルもあり、十歳くらいのベールガールに交ざって弟のリュカが母親と一緒にベールを持ってくれたのが嬉しく、胸が熱くなった。

バージンロードの先で待っていたジェラールの美々しさは言わずもがな。

彼の白い婚礼衣装は襟や袖に金銀の糸で精緻な刺繍が施され、いつもよりドレープの量が多いジャボには豪華なブローチが輝いていた。