没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~

「弟みたいなものですのでお気になさらず。私はルネ。ぜひぜひふたりきりでお話を!」



* * *



ルネがフレッドとふたりでバルコニーに向かっているのを、ダンス中のオデットが気づいた。

「ジェラール様、ルネが男性に連れられていきます。どうしましょう?」

貴族たち全員の顔と名前を覚えるにはまだまだ時間が必要で、オデットはルネと一緒の青年が誰だかわからない。

ルネは結婚詐欺師に引っかかったことがあるため心配すると、ジェラールが大丈夫と笑った。

「バルレー子爵の令息、フレッド殿だよ。誠実な人だから安心していい。それにルネの方が積極的に引っ張って連れていこうとしているように見えるけど」

「本当ですね。ルネがいい人に巡り合えてよかった。あ、でもロイがひとりぼっちになってしまいます」

ひとりにされてやけになっているのか、ロイは山盛りのサラミの皿と二人前のカットステーキの皿を手にして、フォークが持てずに困っている。

ハハと笑ったジェラールは踊りながら移動し、オデットの視界にロイが入らないようにした。