没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~

オデットに少し似たリリアは、あれからもたまに手作りお菓子を持ってカルダタンにやってくる。

リリアがロイに恋しているのは明らかで、ロイもまんざらではない様子。

しかし照れくさいのかいつもぶっきらぼうな対応で、素直になれずにいるようだ。

ルネはふたりの恋路を今後もニヤニヤと見守っていくつもりである。

(ロイってからかいがいがあるのよね。つい楽しんじゃう)

ルネが苺をつまんでパクリと口にしたら、隣に誰かが立った気配がした。

顔を横に向けると見知らぬ青年がいて、スラリとした長身でブロンドの髪の貴公子だった。

(どこの王子? めっちゃイケメン。もろ私のタイプだわ)

頬を染めて目を丸くするルネに、彼は上品に微笑みかけた。

「お美しいお嬢さん、初めまして。私はバルレー子爵家の三男、フレッドと申します。よろしければバルコニーに出てお話しませんか? 今宵は月も綺麗ですよ」

(嘘っ、私を誘ってるの? これって玉の輿チャンスかも!)

ルネの目は美味しい獲物を見つけたとばかりに正直に輝いたが、フレッドはロイに注意を逸らしているので気づいていない。

「そちらの、食欲旺盛な彼は……」