没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~

しかしジェラールに強く抱きしめられ、否定の言葉は彼の胸にモゴモゴと吸収されてしまう。

「勝手に思わせておけばいい。そうすれば俺たちの結婚に異を唱える者は出ないだろう。最速で婚姻の儀まで進められそうだ」

(いいのかしら……)

嘘をついているようで戸惑ったけれど、ジェラールが嬉しそうに笑っているのでそれでいいと思うことにする。

愛しい彼との未来がはっきりと見えてきた。

頼もしい腕に守られたオデットは、砂糖菓子のように甘くとろける夢心地に浸っていた。



* * *



晩餐会から半年ほどがすぎて季節は初夏。

ルネは、親友オデットがついに王太子妃となった喜びに胸を躍らせている。

それと同時に、ひと仕事終えたような達成感も味わっていた。

(やれやれって感じよ。オデットは鈍感だから私がふたりの仲を取り持ってあげなかったら、きっと今でも恋心に気づいてさえいなかったわ。功労者は私よね)

ここは王城の大邸宅にある豪華絢爛なダンスホール。


王太子の婚姻の儀は今日の午前中に行われ、午後はお披露目のパレードがあった。