没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~

鼓動が三割増しで高鳴っているけれど、具合が悪いのではなく、いつも優しいジェラールが叱るほどに心配してくれたせいである。

魔具を使えば必ず代償があるはずなのに、どこにも異常はなく、それどころか内から活力があふれてくるように元気だ。

(どうして?)

マリエルは王城の使用人に抱えられ、医務室に向かうべく会場を静かに後にした。

それを見送ってからオデットは立ち上がり、ジェラールと向かい合って首を傾げる。

「もしかして私は、生命力があり余っているのでしょうか?」

「え?」

頭のいいジェラールでもわからないようだが、オデットは会場を見回して自分で答えを見つけだした。

「わかりました。ここには大勢の貴族がいらっしゃるからだと思います。会場に入ってからずっとウズウズしていたんです。皆さん、素晴らしい宝石をお持ちなんですもの。鑑定したくてたまらない。倒れてなんかいられません!」

オデットは胸の前で手を組み合わせ、目を輝かせる。

右を見ればサファイアとダイヤモンドのイヤリングを揺らした貴婦人がいて、左を見れば大きなエメラルドのブローチを襟に留めた紳士がいる。