没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~

「父上のせいではございません。呪いをかけられていたのですから」

「どういうことだ?」

「そのターコイズのカフスボタンです。呪術の気配がするとオデットが教えてくれました。砂漠の遭難者が水を求めるが如く、聖女を強烈に欲するという呪いがかけられていたのです」

国王は目を見開いてカフスボタンに視線を落とし、それからステージ上のオデットを見た。

「そうか、オデット嬢がわしを救ってくれたのか」

その呟きはオデットの耳にも届いたので、慌てて首を横に振る。

「私は王太子殿下の推理の裏づけとして鑑定しただけですので」

謙虚かつ正直なオデットを国王は好意的な目で見てくれて、「ふたりに感謝する」と言ってくれた。

ジェラールはオデットと笑みを交わしてから、面持ちに険しさを取り戻す。

「そのカフスボタンは父上の趣味とは違うように思いますが、どなたからの献上品ですか?」

「インペラ宰相だ。聖女降臨の話が湧いた数日前、わしが隣国を外交訪問しただろう。旅の護り石としてくれたのだ」

ターコイズはその昔、とある商隊がラクダの首につけており、そこから旅のお守りとして贈られるようになった。