没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~

「百部、作りましたので、どうぞお気のすむまで破ってください」

インペラ宰相は差し出された報告書を掴んでワナワナと震え、貴族たちからは冷ややかな視線が注がれていた。

一方オデットは、先ほどからずっとマリエルを心配している。

(ブレスレットを外したのに、マリエルさんのお顔の色が悪いわ。倒れてしまわないかしら……)

マリエルは追い込まれた父親を苦しそうに見ている。

「お父様、役立たずでごめんなさい……」

自分がうまく立ち回れなかったせいで迷惑をかけたと思っているのだろう。

今にも泣きそうな声で謝罪した娘を、宰相が怒鳴りつけた。

「お父様と呼ぶな! わしにはお前のような娘はいない!」

その言葉はなによりマリエルを傷つけたようだ。

ショックのあまりに両手で顔を覆って泣き出したマリエルに、オデットは深く同情する。

それと同時に抑えきれない怒りが湧いた。

いつもはおっとりと柔和な目元をキッとつり上げたオデットは、インペラ宰相の目の前に立った。