没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~

「聖女サラ様、改めマリエル・アシュリーさんの母親はインペラ宰相の愛人のひとりでした。過去形にしたのは、十年ほど縁が切れていたからです」

マリエルの母親は美人と評判の平民の娘であった。

インペラ宰相が愛人としたために結婚はできず、今も独身で娘のマリエルとふたり暮らし。

愛人だった頃は宰相から生活費をもらっていたそうだが、マリエルを産んで十年ほど経ち肌の張りを失ったら、用済みとばかりに援助を打ち切られてしまったという。

「結論を申し上げますと、マリエルさんはインペラ宰相と愛人の間に生まれた娘です。縁を切られてからの母子の生活は困窮していました。ですから生活費の援助の再開と引き換えに、偽聖女になることを承諾したのでしょう。マリエルさんの染める前の髪色は紅茶色。こちらは近隣住民の証言です」

「でたらめを申すな! それを寄越せ!」

声を荒げたインペラ宰相はカディオから報告書を奪うと、ビリビリに破り捨てた。

これで証拠はなくなったとばかりに高らかに笑う宰相に、カディオが呆れの目を向けて上着の内側からもう一部の報告書を取り出した。