没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~

ヒソヒソとした批判があちこちから聞こえ、咎めるような視線が壇上のインペラ宰相に集中した。

内心では焦っているであろうに、宰相は余裕のあるふりをしてワハハと肩を揺らした。

「楽しい物語ですな。それこそおとぎ話のようですぞ。仮説や推測ばかりではありませんか」

ジェラールは真顔でじっと宰相を見据え、直後にクッと馬鹿にしたように笑った。

宰相の眉間に青筋が立ったら、指をパチンと弾いて誰かを呼んだ。

入場したのは近侍のカディオ。

スタスタと歩み寄った彼は一礼してステージに上がると、紐で閉じた書類を宰相の目の前で開いた。

「王太子殿下のご命令で作成した調査報告書でございます」

「なんの調査だ」

「インペラ宰相が懇意にされております女性たちについての調査です」

六十二歳のインペラ宰相は妻子も孫もいるが、若い頃から愛人を複数人囲っているそうだ。

「や、やめろ!」

女遊びが盛んな様子を事務的につらつらと述べられて、宰相は慌てていた。

宰相の手が報告書に伸ばされたが、カディオはうまくかわしてページをめくる。