没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~

レオポルド派の貴族が政治の中枢に戻ってきたら、仲間内で独占状態だった利権を手放さねばならないのではないかと焦った誰かが、聖女を降臨させて王太子に嫁がせ、オデットとの婚姻を阻止しようとした……それがジェラールの推測だ。

(派閥がなくなって皆が仲良く付き合える貴族社会になればいいとのんきに思っていたけど、利権を分けたくないと思う貴族がいるのね。私はただ、愛する人と結ばれたいだけなのに……)

オデットが静かにショックを受けている一方で、ジェラールが妃を決めたような発言をするから、貴族たちはまずはそれにどよめく。

反対する声もあがったが、ジェラールは無視して話を先に進めた。

「考えてもみてください。疫病が蔓延しているわけでもないのになぜ今、聖女が降臨したのかと子供でも不思議に思うでしょう。国立図書館に行けば、三百年前の聖女サヨについて誰でも調べることができる。真似るのは簡単だ。私は最初から偽者だと怪しんでいましたが、その時点では他の仮説を否定できずにいました」

ジェラールは後ろ手を組み、ステージ上をゆっくりと左右に往復する。