没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~

「ま、魔具ですと? なんのことやらわかりませんな」

あくまでしらを切ろうとする宰相にジェラールがため息をつき、サラに片手を差し出す。

立たせてあげようという支えの手でないのは、冷たい視線からわかる。

「ブレスレットを渡しなさい。これは命令だ」

うろたえるサラが助けを求めるように宰相を見たが、視線は合わない。

いくら宰相といえども王太子命令では、口をはさめないようだ。

「早くしなさい」

ジェラールの厳しい促しに、サラは仕方なくブレスレットを外して手渡した。

すると顔色がいくらかよくなる。

自力で立ち上がることもできたので、オデットはホッと胸を撫で下ろした。

(このままブレスレットを使い続けたら、サラさんは無事でいられない。取り返しがつかなくなる前に魔具を手放して、本当によかった……)

ジェラールは忌まわしいものを見るような目をして、ブレスレットをステージ下に投げ捨てた。

大理石の床にあたり金属音が響いたが、壊れてはいないようだ。

心なしか会場に流れる空気が冷たく感じる。