没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~

(そういえばあの手袋、カルダタンにいらした時にもはめていたわ。お気に入りなのかしら?)

安直な感想を抱いたオデットだったが、サラが手袋を脱いだ直後にハッとした。

レースの下から現れたのは銀のブレスレットで、ドロップカットが施された水晶が十三個はめこまれていた。

(あのブレスレットから呪術の気配がする。レースの手袋は、聖紙と同じで呪いを封じるためのものね。だから気づかなかったけど、あれはきっと――)

ジェラールの袖を引っ張り耳打ちすると、彼は驚かずに頷いた。

「気づいていらしたんですか?」

「怪しむ点が多々あった。調べれば調べるほど証拠は出てきたが、まだ推測の域を超えていなかったんだ。ありがとう。オデットのおかげで確信できたよ」

(ジェラール様は最初から見抜いていらしたの?)

ずば抜けた推理力にオデットは驚いて感心する。

「今はまだ泳がせておく。聖女様の神通力をとくと拝見することにしよう」

悪巧みをしているようにニヤリと口の端を上げたジェラールが視線をステージに戻したので、オデットもそれに倣う。

サラがブレスレットをはめている左手を、馬番の顔にあてたところだった。