没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~

(聞かされていないのね。うちが駄目なら、どこをあたればいいのかしら)

「おねえたん。あちた」

「飽きたの? あ、じゃあ、かくれんぼする?」

「しゅる!」

リュカを木馬から下ろしてふたりきりでかくれんぼを始めたが、オデットと一緒に隠れると言うので鬼がいない。

居間の飾り柱と壁の間の、角度によっては丸見えのスペースにリュカを抱っこしてすっぽりと収まる。

小さく柔らかで温かい弟の体に幸せを感じるが、やはりジェラールと両親の会話は気にかかる。

「ささいな情報でもいいのです。どうか思い出してください」

「は、はい」

こめかみを押さえ難しい顔をして考え込む父に、ノーマンが近づいて声をかけた。

「旦那様、こちらを」

ノーマンが持ってきたのは革表紙の古い日記帳で、オデットの父の眉間の皺が解けた。

「そうだ、父の日記を読めばなにかわかるかもしれない。ノーマン、でかした!」

「恐縮でございます」

テーブル上で日記を開いて、父とジェラールが身を乗り出すようにして覗き込む。

オデットもそこに加わりたい気持ちだが、滞在中しか弟を抱きしめられないと思えば、小さな体を離しがたい。