没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~

王都から遠く馬車で一日半かかる道のりなので、オデットは一週間の休みをもらったが、ジェラールは公務に忙しいため滞在できないという。

時間ができ次第、馬を走らせるからと言われ、オデットはひと足先に帰ってきたのだ。

ジェラールがこんなに早く来るとは思わなかったので、まだ両親に帰省の目的を話しておらず、王太子の顔も知らない両親はポカンとしている。

弟に夢中になるあまりジェラールが来ることを忘れそうになっていたオデットは、慌てて立ち上がって頭を下げた。

「殿下、すみません。まだ両親になにも話していないんです」

殿下という言葉に目を見開いた両親が、口々に言う。

「殿下ってまさか――」

「王太子殿下でございますか!?」

ジェラールはマントを脱いでノーマンに預けると、微笑して歩み寄った。

「ログストン伯爵とご夫人、初めまして。私はジェラール・クリスト・バシュラルフです。突然の訪問をお許しください」

ジェラールの握手の求めに応じる父は目を白黒させている。

「うちの娘が、なにか……?」

なにをしでかしたのかと恐れているようなオデットの父に、ジェラールが笑みを強めた。