没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~

苦肉の策の似顔絵を、母が急いでリュカの部屋から持ってきた。

小柄で細身の母は四十歳間近なのに童顔だからか、オデットと並ぶと姉妹のように見える。

「ほら、これよ。お父さんが描いたの。リボンのカチューシャがあってオデットにそっくりでしょ」

掲げるように見せられた似顔絵に、オデットは泣きたくなる。

(リボンのカチューシャしか似ていないわ。というより、人間に見えない……)

父に絵心はないようで、福笑いのように顔のパーツの位置がずれていた。

この絵にそっくりと言われたら乙女心が傷つくし、リュカが実物のオデットを見て姉だと認識できなかったのも無理はない。

「リュカ、私がお姉ちゃんだよ。毎日リュカのことを想っていたんだよ。お願い、一緒に遊んで……」

リュカはまだ母親の足にしがみつくように隠れている。

オデットがしくしくと泣き出したので、両親はおろおろと慰めようとする。

「そうだオデット、気分転換にお父さんと薪割りしないか? 体を動かすとスッキリするぞ」

「それよりお母さんと栗拾いにいかない? 近くの栗の木は収穫を終えたんだけど、もう少し備蓄したいから山に入ろうと思っているの」