没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~

「は、はい、もちろんです」

「いい子だ」

少し体を離したジェラールは、瞳を甘く艶めかせてオデットの顎をすくう。

キスを予感したオデットは、自分の鼓動を耳元に聞きながらそっと目を瞑った。

イチョウの香りを含んだ涼しい風がオデットの肩までの髪をなびかせ、ふたりのキスを隠してくれる。

二度目の口づけは濃く深く、オデットに夢中な彼の気持ちが伝わる情熱的なものだった。



木枯らしが吹き冬が目前に迫る頃、オデットは一週間の休みをもらい一年半ぶりに実家に帰省をした。

豊かだった時代に建てた屋敷なので室内の壁は浮彫で飾り柱があり、豪華で広々とした二階建てである。

けれども古い調度類は素人修理で使い続け、布張り椅子の破れ目につぎはぎをしている悲しさだ。

自然豊かな山があるのはありがたいことで、薪に不自由はなく、暖炉には赤々と炎が揺れていた。

オデットが到着したのは昨夜遅くで、両親と執事が起きていて出迎えてくれたが、会いたくてたまらなかった三歳の弟はすやすやと夢の中だった。

暖炉前の絨毯に膝をついたオデットは、朝起きてきたばかりの弟を両腕を広げて呼んだ。