没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~

「あの、それは違うと思います。アクアマリンの指輪からは恨みの感情が伝わってきませんでした」

どうしたらいいのかと出口を探してもがいているような深い悩みと、入水の際の溺れる苦しみは強烈であったが、弟への憎しみは一切しみ込んでいない。

ジェラールが期待に口角を上げたが、すぐに難しい顔に戻る。

「それを父上に教えても、ご自分を責めるのをやめないだろう。本人の口から言われたのなら救われるかもしれないが。オデット、霊魂を呼び戻せない?」

真顔で驚くことを問われ、オデットは胸の前で両手を振った。

「そんなすごい力はありません。私はただの宝石鑑定士ですので」

「ただのじゃない。偉大な鑑定士だ。その上に〝俺に愛されている〟も加えておこう」

ウインクつきの甘い言葉にオデットの胸が高鳴る。

「私は世界一の幸せ者ですね」

愛してもらえるだけで十分に幸せだとも伝えたら、ジェラールに抱きしめられた。

「オデットの謙虚なところも魅力的だけど、これで満足してもらっては困る。俺はオデットを妃にしたいんだ。そのためには父上に三十年前のケリをつけてもらわないと。協力してくれる?」