没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~

(期待と不安と幸せな気持ちが伝わってくるけど、この想いは強くないわ。もうひとつの想いの方が強くて……うっ、胸が苦しい。息も苦しい。まるで溺れているような……)

流れ込んだ苦しさに、オデットは呼吸を乱した。

「オデット!」

ふらついたオデットをジェラールが支えて心配する。

「大丈夫です。すみません」

呼吸を整えたオデットはおっとりとした雰囲気を消し、凛とした眼差しを国王に向けた。

「石はアクアマリンですね。国王陛下のお母様のものだったのではありませんか?」

アクアマリンは神話の中で、海の精の宝物とされている。

そのため船乗りがお守りとしたり、夫婦や家族の繋がりに潤いをもたらすとも言われているので結婚のお祝いに贈られたりもする。

これはあくまで推測だが、国王の母親は海辺の街の出身で、指輪は嫁ぐ際に故郷の親しい誰かから贈られたのではないだろうか。

読み取った期待と不安と幸せな気持ちは、若い女性の初々しく柔らかな香りがした。

そう説明したオデットにジェラールは尊敬の眼差しを向けてくれるが、国王はそれがどうしたと言いたげだ。