没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~

「恨んでいるのはわしではなく兄上だ。死後の世界でわしが玉座を追われるのを願っているだろうな」

国王は服の中にしまっていた金のチェーンを襟元から引っ張り出した。

それには金の指輪が吊り下げられていて、緑がかった薄い水色の透明な石はアクアマリンのようだ。

似た色味のエメラルドやサファイアに比べ、アクアマリンは低価格で取り引きされる。

国王が身に着けるに相応しいとは言えないだろう。

オデットは首を傾げる。

(チェーンに通して身に着けるのはサイズが合わないからよね。リングも細いし女性用みたい。もしかして母親の形見かしら?)

「父上はいつもそれを身に着けておられますが、一体……」

今まで聞きたくても聞けなかったのだろうか、ジェラールが遠慮がちに尋ねる。

それを無視した国王は、金のチェーンを握ってオデットに向けた。

「そなたの不思議な鑑定力に興味がある。これがどんな指輪か当ててみよ」

試すような言い方をされても、オデットは気を悪くすることなく指輪に手をかざして想いを読もうとする。