没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~

(そうだったの。兄弟で争わねばならないなんて悲しいわ。きっと国王陛下もつらかったわよね。亡くなられてしまったら仲直りもできなくてお可哀想……)

オデットは深々と頭を下げた。

「なにも存じ上げず、軽々しく実家の話をお聞かせして申し訳ございませんでした。王太子殿下をお慕いしておりますが、私は――」

王太子の結婚は当人の感情だけで決められないものだとわかっている。

妃として不適格だと自覚したオデットは、身を引こうとしていた。

(私が嫁いだせいで、また貴族たちが争ったら困るもの。でも、殿下とお別れできる? こんなにも好きになってしまった気持ちはどこにしまえばいいの?)

「私は……私は……」

結婚を諦めると言おうとしているのに、言葉にならない。

鼻の奥にツンと涙の感覚を覚え、胸が痛くてドレスの胸元を握りしめた。

するとジェラールに肩を抱かれる。

険しい顔の彼がいら立ちを国王にぶつけた。

「父上、レオポルド伯父上はすでに亡き人。いい加減に恨みをお捨てください!」

息子の不遜な反発に眉を寄せた国王だが、怒っているわけではないようだ。