没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~

これから結婚の許しを得るため、国王に謁見する。

淡いピンクのデイドレスも羽織っているショールもパンプスも、すべてジェラールが贈ってくれたものだ。

今日のための衣裳が王城の使用人によって届けられたのが一昨日のことで、カルダタンは……いや、ルネとロイのふたりは大騒ぎだった。

『王太子殿下とついに結婚? やったわね。オデットなら身分の壁なんか……えっ、ログストン伯爵令嬢? オデットって貴族だったの!?』

プロポーズをされたことや、自分の身分について一気に説明したら、ルネは大興奮で絶叫して喜んでくれた。

ロイはジェラールが王太子だとその時に知ったのだが、恐れることなく対抗心をむき出しにしていた。

『僕からオデットを奪うなんて許せない。王太子だって構うものか。次に会ったらぶっ飛ばしてやる!』

ブルノはと言うと――。

『へぇ。それはめでたいな』

ひとりだけ動じていないように見えたけれど、常連客に『うちのオデットが妃になるんですよ。すごい話でしょう』と自慢していたので、内心では小躍りしてくれていたらしい。