没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~

カディオは忠臣であるからこそ、ジェラールが誤った行動をした時には注意すると決めているようだ。

国王の許しを得るまではキスは禁止で、許可後も人前でイチャイチャしないようにと厳しく言われた。

「もちろん、ご結婚まで閨をともになさるのも禁止です。オデット嬢も心得てください」

恋愛経験のないウブなオデットは、キスひとつで平常心を保てずにいる。

それなのに夜の情事に触れられて、これ以上は無理だと両手で顔を覆った。



オデットが王城に呼ばれたのは、プロポーズから三日が経った日の午後である。

迎えの馬車に揺られて城門をくぐり大邸宅前に着くと、ジェラールが玄関前で待っていた。

「オデット、よく来てくれた」

馬車を降りるなり頬にキスをもらって鼓動が高鳴る。

ジェラールは襟に刺繍の入った白い上着に、サファイアのブローチをさりげなく留めていた。

お忍び中のラフな服装とは違う彼に、オデットは緊張する。

「王太子殿下、ご、ごきげんよう」

きちんと挨拶しなければと力みすぎて声が裏返り、笑われてしまう。
「今はまだ気を楽にしていて。そのドレス、よく似合っているよ。とても素敵なレディだ」