没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~

「判断されるのは国王陛下ですので。お許しくださるかは、私にはわかりかねます」

かつてのログストン伯爵家は裕福で王都に街屋敷もあり、他貴族との交流も活発であった。

しかし、今は亡きオデットの祖父がレオポルド派についたことで、家が落ちぶれてしまう。

それはオデットの生まれる前の話で、両親から聞かされたこともなかったため、敵対勢力だと言われても首を傾げたくなる。

(おじい様がどんな方だったのかよく知らないけど、お父様に敵意はないわ)

オデットの父は領民に『もう少し威張ってはいかがですか』と言われるほど優しく穏やかで、野心のかけらもない伯爵だ。

生きがいは幼い息子の成長と、畑仕事だろう。

無駄に広い庭で家族が食べる分の野菜を育てており、この前はジャガイモとカボチャの収穫の喜びを便箋十枚にしたためてオデットに手紙を寄越した。

少々頼りないが、いつもにこやかで貧しくても幸せそうな父をオデットは敬愛している。

田舎の家族を思い出して寂しくなったオデットだが、すぐに意識はジェラールたちの会話に戻される。