没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~

ジェラールに原因不明の体調不良をもたらしたエメラルドのブローチも、呪いがかけられた時点で魔具となった。

ロザリオのダイヤはひと粒だけ呪術の気配がするので、きっと他の誰かを呪ってお役御免となった魔具を分解し、ただのアクセサリーとして再利用したのだと思われた。

それでも体調に影響を及ぼす恐れはあるが、教会という聖域の中であるからか、それとも身に着けてまだ日が浅いためか、バロ司教は見るからに健康そうだ。

「ありがとう、オデット。これはお祓いしてから使うことにしよう」

オデットとジェラールは、バロ司教に見送られて教会を後にした。

流しの辻馬車を探しながら、夕暮れに染まる空の下を寄り添って歩く。

腰に腕を回されても動悸に耐えていられるのは、真面目な話をしているせいだろう。

「オデットの特殊能力の感度が上がってないか? ロザリオに触れる前から呪いの気配を感じ取るとは驚いた」

「そうかもしれません。最近、気になる宝石に出会う機会が増えたからでしょうか。前は触らないとわからなかったんですよ」