没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~

「非常に申し上げにくいのですが、そのロザリオに呪術の気配を感じます」

「な、なんじゃと!?」

バロ司教は教会に伝わる術式でお祓いができても、呪いつきかどうかを感じることはできない。

焦った司教はロザリオを首から外そうとして襟のボタンに引っかけ、呪いのせいで取れなくなったとさらに慌てている。

「落ち着いてください」

外すのを手伝ってあげたジェラールが、十字架を手にのせて眉をひそめる。

「恨まれる覚えは?」

「人々の幸せのために祈るのがわしの職務ですぞ。そのような覚えはありま――」

(あるのかしら?)

青ざめているバロ司教だが、オデットは十字架のダイヤモンドに触れて確かめてから「大丈夫です」と微笑んだ。

「バロ司教を狙って呪いをかけたものではないようです。魔具を分解して、その石のひとつをここにはめ込んだ感じです」

魔具とは、古来から伝わる禁術を用いて呪いや祈りを込めたアイテムのことである。

アイテムとするのは本でも人形でもなんでもいいのだが、想いをより吸収しやすい宝石が用いられやすい。