没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~

青年は教会で雑務をこなしながら司教を目指す聖職者で、教会を訪ねた時に見かけたことがあった。

青年は頷いて、バロ司教の使いで来たと話した。

新聞を置いたブルノが、オデットの隣に立つ。

「これのお誘いかな?」

ブルノが嬉しそうな顔をして、グラスをクイとあおる仕草をしてみせる。

ブルノとバロ司教は飲み友達なのだ。

青年は苦笑して首を横に振った。

「オデットさんに鑑定をお願いしたいそうです。大きく重たい石なので、教会まで来てほしいとのことです。急がないがなるべく早く、とも仰っていました」

言付けを伝えると、青年は一礼してすぐに店を出ていった。

「大きくて重たい石……宝石の原石かしら?」

オデットの鑑定欲がウズウズと湧き上がり、目を輝かせてブルノに問う。

「いつお伺いしたらいいですか?」

急がないがなるべく早くとは、これいかに。

「気遣いがあるのかないのか、バロ司教はまぁ、そういう人だから」

友人をそう評価して笑ったブルノは、今から行っておいでとオデットの肩を叩いた。