没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~

ブライアンは倒れそうな妻に駆け寄り支えているので、エミーにはオデットが付き添った。

「おねぇしゃん、押して」

「うん、いいよ。一緒に遊ぼう」

(意味はわからないかもしれないけど、子供に聞かせていい話じゃない)

話し合いはジェラールに任せることにしたオデットは、子供の相手を買って出た。

申し訳なさげにオデットに会釈した妻を、ブライアンが心配する。

「寝てないと駄目だろ。話は終わったから家に入ろう」

けれどもホッジ夫人が首を横に振った。

「こんなことはもうやめて。人を騙してお金をもらったりしないで」

「聞こえていたのか……」

動揺するブライアンに夫人が悲しげに頷いた。

「今気づいたんじゃないわ。前々からおかしいと思っていたの」

ブライアンは家族に洋品店で働いていると嘘をついていたらしい。

しかし仕事に出かける時間はまちまちで、給料だと言って渡してくれる額も一定ではない。

今日のように夫人が寝込んでしまえば、仕事を休んでも平気だと言って看病や子守りをしてくれる。