没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~

「そんな風に軽く言わないでください。ルネは心からブライアンさんを愛していたんですよ。その気持ちを利用してお金を騙し取るなんて、少しも申し訳ないと思わないんですか?」

「思ってるよ。だから別れる。それともこのまま交際を続けろと言いたいの?」

「それは、駄目ですけど……」

「なら話は終わりってことで。ルネに謝罪はしに行くよ。婚約指輪を回収しないといけないし」

王都から遠く離れた実家に帰ると理由をつけて関係を解消するとブライアンは言った。

「君はルネの心配をしているんだろう? それなら騙されていたと教えない方がいい。なるべく傷つけないように優しく振るよ。他に注文は?」

「ありません、けど……」

ルネの心の傷を浅くしようと思うなら、ブライアンの提案をのんだ方がいいのかもしれない。

だが釈然としない思いは残るので、どうしたらいいのかと情けない顔で隣を見た。

それまでオデットが怒りをぶつけるのを黙って見守ってくれていたジェラールは、まんまと丸め込まれたオデットの頭をポンポンと叩いてから、交代とばかりに厳しい視線をブライアンに向けた。