没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~

それは現在交際中の人数で、関係を切った女性は少なくとも四人いるはずだとジェラールは推測する。

「指輪から読み取っただろ?」

「あっ!」

ルネの婚約指輪に触れた時、流れ込んできた女性たちの悔しさをオデットは思い出した。

ブライアン・ホッジはプロポーズの言葉とともにあの指輪をターゲットに贈り、真剣交際を信じ込ませた。

そして相手の優しさに付け込んで最大限に金銭援助を引き出し、入籍の話になる前に別れを告げる。

返還させた婚約指輪は次のターゲットに。

そうやって騙されたという四人の女性の想いがモルガナイトにしみ込んだのだろう。

「ひどいです。ブライアンさんに恋した女性たちが可哀想」

オデットが泣きそうに顔をしかめたら、ジェラールが頷いてオデットの頭を撫でた。

「だから同情はいらないと言ったんだよ。ブライアン・ホッジは結婚詐欺師だ。断罪しなければならない。行こう」

「はい」

ジェラールが玄関前に立ち、オデットは彼の背に隠れつつ緊張して汗ばむ手でワンピースの胸元を握りしめた。

塗装の剥げかかったドアをジェラールがノックすると、中から「はーい」と間延びした男性の声がした。