没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~

嘘をつきなれていないオデットは咄嗟の言い訳を思いつけないが、ルネが察したようにニマッと笑った。

「デートなんだ。ジェイさん、随分めかし込んでるじゃない。あっ、そういうことね」

ルネがオデットを引き寄せ、耳元で囁く。

「きっと今日、すごくいいことがあるわよ。彼がくれる指輪はすごそう……おっと、私が言ったら台無しね。ごめんごめん。後で素敵な報告が聞けるのを楽しみにしてる」

どうやらルネは、ジェラールがプロポーズするために立派な装いで迎えに来たのだと勘違いしたようだ。

対してオデットは後で報告をと言われて、ダニエルのことを勘づかれたかとヒヤヒヤしていた。

「う、うううん。ルネごめんね。後でね」

ぎこちない笑みを浮かべて冷や汗を流せばさすがにおかしいと気づかれたようで、ルネが首を傾げる。

「オデット?」

するとジェラールがオデットの腰に腕を回して歩みを促した。

「マフィンはブルノさんとふたりでどうぞ。予約の時間が迫っているから俺たちは行くよ」

「レストランを予約しているのね。行ってらっしゃい。楽しんで!」