没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない～下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です！～

ジェラールはダニエル・ヘインズという騎士が在籍しているかどうかの結果を持って、オデットに会いにカルダタンを訪れたそうだ。

けれども理髪店に行ったとブルノに言われ、髪を切ってより可愛らしくなったオデットを誰より先に見たいと思って追いかけたら、助けを呼ぶ声に気づいたという話だった。

ジェラールが困り顔でオデットを叱る。

「俺が現れなかったらどうなっていたことか。接触しないように言っただろ。約束を守ってくれないなら、本当に城に連れて帰るよ」

「ご、ごめんなさい。二度と危ない真似はしませんので、お城はちょっと……」

恋人でも妃候補でもないのに連れ帰られては大変だとオデットは一生懸命謝って、それから気になっていた調査結果を尋ねた。

「ダニエルさんは王城騎士だと嘘をついていたんですよね？」

「ダニエル・ヘインズという王城騎士は実在した。だが五年前に退役している上に年齢は四十だ。あの男ではない。俺が思うには恐らく――」

退役者と知り合って騎士服を買い取り、名前は勝手に拝借したのではないかというのがジェラールの推測だ。

彼は眉を寄せて続ける。