没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~

「危険ということはないと思いますよ。紳士的で優しいってルネが言っていました」

デートの際にドアを開けてくれたり椅子を引いてくれたりは当たり前で、さりげなくルネの髪に薔薇の花を挿してくれたりもするそうだ。

遠方にいる彼の両親は高齢で持病があり、兄夫婦が面倒をみているそうで、それを申し訳なく思った彼はせめて金銭的援助をと給料の半分も仕送りしているらしい。

そういうところを尊敬しているとルネが話してくれた。

「だからデートでの食事代はいつもルネが払っているそうです。結婚したらもっと協力するつもりって言っていました。ルネの方こそ優しいですよね」

張り切った顔で胸を叩いたルネを思い出し、オデットはフフと笑う。

するとジェラールに、『ほらな』と言いたげな呆れの目で見られた。

「とにかく、俺が調べるからオデットは接触しないこと。約束してくれないと、君を攫って俺の部屋に住まわせるから」

ウインクつきなので冗談のようだが、オデットの胸はしっかりと高鳴る。

(なんて答えたらいいのかわからなくて困るわ……)

頬が勝手に火照るのも感じて恥ずかしくなる。