没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~

「わかっている。結果がどうであれ、俺から彼女にはなにも言わない。オデットを通すから」万が一、ダニエルが王城騎士でなかった場合、ルネへの伝え方には配慮が必要だ。

友達を傷つけたくないという気持ちを察してくれて、オデットはホッとした。

「それでオデットの方は?」

「え?」

「指輪に触れた瞬間、驚いていただろ。どんな想いを読み取ったんだ?」

プロポーズを喜んでいるルネを気遣って、驚きは極力控えたつもりでいた。

それなのに気づかれてオデットの頬が赤くなる。

(私の顔をじっと見ていたのね。恥ずかしいわ)

けれども照れている場合ではなく、モルガナイトにしみ込んでいた四人の女性の恨みについて説明した。

「なるほどな。ダニエルの魂胆がなんとなく読めた」

それを説明してほしかったが、まだ憶測の域を超えていないからと教えてくれなかった。

「ダニエルがルネに会いにきても、オデットはかかわるなよ」

「どうしてですか?」

「今の時点では、どれくらいの危険人物かわからないからだ。純朴で素直な君だから、簡単に騙されそうで心配だ」