没落令嬢は今日も王太子の溺愛に気づかない~下町の聖女と呼ばれてますが、私はただの鑑定士です!~

「ちゃんと進展しているようでよかった。オデットはぼんやり娘だから、そのくらい積極的にいった方がいいわよ」

「オデットのパンの好みを熟知している親友が言うなら間違いないだろう。今後は攻撃的に口説くことにするか」

オデットは口元から彼の手を押し下げて、真っ赤な顔で抗議する。

「もうっ、からかわないでください」

ジェラールの膝から下りたオデットは、ダニエルの話に戻そうとルネの左手を取った。

「このモルガナイト素敵ね。透明度が高くて色も綺麗だわ」

モルガナイトはピンクからオレンジ色のパステルカラーで、紫がかったものもある。

価値があるとされるのはピンク色が濃い石なのだが、ルネの婚約指輪のような淡いサーモンピンクの石は可愛らしいとオデットは思う。

しかし褒めたつもりが、ルネを驚かせてしまった。

「えっ、ピンクダイヤじゃないの?」

「うん。輝き方がダイヤとは違って……ルネ?」

眉を寄せて薬指の指輪を見つめるルネは、呼びかけられてハッと顔を上げた。

「ダニエルがピンクダイヤだって言ってたから……」

カラーダイヤモンドは希少価値が高く、品質がよければ高額で取り引きされる。